旧ユーゴスラビアを旅する完全版+ギリシャ・メテオラ前編

 昨日チケットを買った親切な旅行代理店のオジサンの出迎えを受けて、バスに乗ってアルバニアを出国ギリシャに入国した。ギリシャは元々予定に入っていなかったのでガイドブックは持っていない。昨夜一夜漬けでググりまくった。バスは目指すカラバカのほんの手前で休憩を入れる。後もうちょっとなのにと思うところだが、バス自体はその先もずっと走るので仕方が無い。

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 休憩中、私は悩んでいた。と言うのはメテオラまで来たのは良いが、再び此処からアルバニアの首都ティラナに帰る方法がハッキリしない。私がググって見つけた情報はもう数年前の旅人の情報で、現在それが当てはまるかは解らない。私は休憩中の運転手に帰りの便を尋ねてみた。残念ながら彼は英語を話せなかったが、自分の会社に電話をかけて英語を話せるスタッフに代わってくれた。私がカラバカからティラナのバスを探していると言うと、快く応じてくれて、バスの乗り場と、ついでにバスの色とナンバーまで教えてくれた。これなら安心だ。

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 カラバカの街に降り立った瞬間度肝を抜かれた。なんだあの岩は!エアーズロックカッパドキア…これまで幾つも奇岩は見てきたが、これは中々迫力がある。更にその頂上に6つの僧院が建っていると言うのだから期待が高まる。それにしても訪れる奇岩どれも揃って聖地となっているのだから人間って本当奇岩好きな動物だと思う。

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 もう待っていられない。早速Maps.meを手がかりに街の奥を目指し、山道に入れば後はもう一本道だ。手助けは要らない。何ぞ何処かの情報で、バスで行けると書いてあったがどうせ私に選択肢は無い。ガンガン登っていく。振り返ればカラバカの街がみるみる小さくなっていき勾配もきつくなっていく。そして漸く先ず最初の僧院アギア・トリアダ僧院の導入部に到着した。

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 事前に観光ポスター等で良く見かけるメテオラの僧院の写真を見ると、いったい何処からどうやって登っているのか不思議に感じるが、成る程こうやって登ってくるのか。まさか修道士さん達がロッククライミングして僧院に行く訳も無いだろうから不思議に感じていたが、不思議が解決してスッキリした。螺旋状に彫られた階段を登り僧院内を拝観する。

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 続いて坂を登り二つ目の僧院を目指す。登りきったところで驚いた。立派な車道が通っている。ビックリしている私を大型観光バスが追い抜いていく。

「成る程、こう言う事だったのか!」

 私は不思議に思っていた。先述した通り、てっきり私は煙突状に聳える岩の上の僧院をイメージしていた。だから登頂にはそれ相当の苦労と体力が必要だと思っていたけれど、大手ツアー会社が頻繁にツアーを催行している。ツアーと言えばオジイチャン、オバアチャンが主体だが、いったいどうやって登っているのだろうかと。

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 手品もカラクリが解ってしまうと拍子抜けしてしまうものだが、私もその場で拍子抜けしていた。カラバカの街から見ると屏風の様に張り出した奇岩の岩塊だが、それを回り込む様に登れば大型バスも楽に通行する事が出来る程のスペースがあるのだ。

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 成る程登山道では有名な世界遺産の割にはあまり観光客とすれ違わないなと感じたが、多くの観光客はバスを使って登山道など登らなかったのだ。合点がいった。

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(聖ステファノス修道院)
 だけど、どこか寂しさもある。元々修道士達は人里から隔絶した場所を求めてこの地に籠り修業を重ねてきたに違いない。今日になって、道路が整備された事によって、皮肉にもその奇抜な世界観が注目を浴びて、ワンサカと観光客が押し寄せてくる。

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(聖ステファノス修道院の薔薇)
 開館時間はバタバタと人が途絶え得る事の無い僧院の中。勿論彼等観光客が落とすお金が僧院にとって貴重な財源となっているに違いない。しかし一方であまりの俗世ぶりに嫌気が差して、他の僧院へと移っていく修道士もいる事も確かだ。中々難しい問題だが、せめて彼等の邪魔にだけならぬ様拝観させて頂かねばと思う。

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(アギア・トリアダ修道院)
 そんな思いで入場した聖ステファノス修道院は女子修道院。他にもうひとつ女子修道院があったが、共に庭園のお花の飾り付けとか女性ならではを感じた。外観も堂々としており僧院越しに広がるカラバカの平原も印象深かった。

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(聖ステファノス修道院の庭園)
 引き返す途中この旅恒例の夕立が来た。山の中では不利なので一旦下山する。山道は覆い被さる木々が傘代わりをしてくれる。下界でギロピタを食べる。ギリシャケバブの様なロールタイプのサンドだ。忙しそうだったので食器を下げたらオバチャンが大手を降って見送ってくれた。個人経営の店はこれだから好きだな。因みにギリシャ語でレストランは(Taverna)「食べるな!」と読む。日本人はオアズケらしい(笑)

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(ギリシャ名物ギロピタ)
 食べ終わる頃には雨は止んだ。もういっちょ登ってみる。どうせ今からじゃすぐ日没だし、この天候じゃ夕焼けも望めなかったが、このままホテルにも帰りたくなかったし、街歩きも気分じゃなかった。ゆっくりと日が暮れていく。奇岩の上の僧院も閉館となって静けさを取り戻す。

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 修道士さん達はこれからどんな夜を過ごすのだろう?観光客が去り、彼等本来の時が始まっている筈だ。おっといけない。早く下山しないと。スマホのライトを頼りに登山道を下っていく。カラバカの夜景が出迎えてくれた。