旧ユーゴスラビアを旅する完全版+アルバニアへ!

 後ろ髪を引かれながらもオフリドを発つ朝が来た。本日は今回の旅4か国目となるアルバニアを目指す。これまでは首都間を移動してきたので移動手段はシンプルだったが、今回は地方から地方を移動するのでちょっと厄介だ。と言うのもオフリドからアルバニアの首都ティラナに直行するバスが無い。更には目指すベラトは途中下車して更に乗り換えなくてはいけないからだ。

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(サヨウナラ オフリド!)
 先ずはオフリドからアルバニアの首都ティラナに向かうバスが発着する隣町のスルトゥーガに向かいバスを待った。するとなんと此処でJimyちゃんと再開した。

「万事上手く行ってるかい?」

 コクりと頷く彼女。どうやって死体の詰まったトランクを此処まで運んできたのだろう?華奢な体して本当はマッチョ?それに頼り無さそうに見えてこのルートを選択するなんて旅人として良い筋持ってる。等と感心しながらバスを待つのだけど中々来ない。心配になって切符売り場のオバチャンに問い合わせると

「なんで待ってなかったの?もうバスは行っちゃたわよ!次のバスのチケットは買い直し、そのチケット使いたかったら明日の同じ時間にきなさい!」

「そんな訳無い!私はずっと指定された場所で待っていた!」

 と言っても、ガンとして譲らず先程の同じ文句を繰り返す。私は激怒プンプン丸状態でバス停に戻り、ちょっと前に会話した同じバスを待つ地元のオバチャンに今言われた事を伝えた。するとそのオバチャンにも激怒プンプン丸が伝染した様で、仁王様な表情で切符売り場のオバチャンに噛みついた。以降マケドニア語は解らないので私の勝手な対訳。

「あんた何訳解らん事言ってんのよ!私達ずっと此処でバス待ってるけど来やしないわよ!東洋人の心許ない旅人が質問してるのにいい加減な事言わないの!」

 とガミガミ怒り、係員からバスの運転手の電話番号聞き出し直接電話し確認。私に大丈夫である事を教えてくれた。毒には毒を以て制せと言う言葉があるが、オバチャンにもオバチャンを以て制せばば効果的な事が解った。

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(バルカン半島にもスイカバーがあった!)
 バス停に戻ると直にバスがやってきた。国際線のバスなのであらかじめ乗務員が乗客のパスポートを控えるのだが、Jimyちゃんはそれに気づかなかった様なので教えてあげると、彼女は徐にハンドバッグからパスポートを取り出すではないか。海外では引ったくられる可能性が強いからハンドバッグを持つ事すら危ないのに、その中にパスポートなんて、なんて無防備な!イヤイヤ、心配だからと余り説教臭くなってもいけないいけない。きっとこう見えて真実の姿はストリートファイター春麗なので引ったくられたところで簡単に取り戻せるのかもしれない。そうでも考えないと危なっかしくてボディーガードに志願したくなるが、私のボディーガードが一番危険極まりないだろう。

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(ゲーム・ストリートファイターのキャラ春麗)
 それから小一時間、無事アルバニアに入国を済ませ途中の休憩に立ち寄った。両替も兼ねて売店で飲み物等を買っているとJimyちゃんも店に入ってきた。ジュースの棚のドアを開けようとしているので慌てて止めた。

「お嬢の分も買ってあるから。」

 売店を出てベンチに腰かけると、遅れて出てきた彼女も私の隣にチョコンと座り、お菓子の袋を開けて私に勧める。最初オフリドへのバスに乗ってきた時は、無表情で一点を見つめ、なんか暗い子だなぁと思っていたが、打ち解けてくると中々可愛らしい。旅程とか、故郷とか辿々しいながらも英語で色々お話をした。聞けばなんとヨーロッパからの出国予定日が同じ日の様だ。勿論出国する場所は違うけれど、彼女はミラノ、私はベネツィア、中々意見の合いそうなルートを辿っている。お互いちょっと盛り上がったところで、無情にもバスの出発の時間。

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 私は一人Maps.meを睨みつける。画面に示される現在位置が予定の場所に差し掛かった。

「おーい!此処で私を捨ててってくれ!」

 バスの運転手に叫んでバスを停めて貰う。私は此処で降りてベラトに向かう。降りる前に客席を振り返れば、Jimyちゃんが今まで一番の満面の笑顔で手を振ってくれた。行動はバックパッカーそのもので、出で立ちは頼りないお嬢様。どっちが本当なのかは解らないけど、とことん旅を楽しんで、そして無事ミラノに辿り着いて 欲しい。

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 旅は出会いと別れの連続で、ちょっと振り返って見てしまうがバスはどんどん小さくなって消えていく。旅はいつだって後ろ髪を引っ張ってくれるが、自分は引っ張れる程髪長くない。

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 でも他人の心配してる暇などは無くて、今私はアルバニアと言う初めて訪れる不明な国の、バス停でもなんでも無い幹線道路の脇に立ってベラト行きのバスを捕まえなくてはいけない。バス停じゃないから時刻表なんてありやしない。いったい何処に立って待てば効果的か?ウロチョロしてると路上に座り何か知らぬが商品を売っているオジサンがいた。発展途上国ではたまたま見かける光景だが、こんなガンガン車が飛ばす道沿いで物を売っても果たして車は止まるのか?そして割りに合う売り上げはあるものなのか?

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 そんなオジサンにベラト!ベラト!と叫ぶ。こんなシチュエーションでは、どうせオジサンは英語を喋れない。こんな場合は子供の様に必要最低限の現地人でも解る単語を連発する。下手な単語を連ねて文章を作ると伝えたい言葉が埋もれてしまって余計解らなくなるからだ。ベラト!ベラト!と叫んでるのだから、後は言わなくてもコイツはベラトに行きたいのだな?と理解して貰える。

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(親切な道端の行商のオジサン)
 するとオジサンのやる気スイッチが入ってしまった様だ。私はバスを待つ場所さえ教えてくれたら万々歳だったのだが、オジサンは任しとけ!とばかりにロータリーを回るバスが此方を目指して走ってくると、うーんあれは違う!これも違うと大降りのデスチャーを送ってくれる。そんな事が十数台繰り返された後、オジサンが大手を降りながら大声で叫ぶ

「キタァーーーーー!」

 私もそれに合わせて大手を振ってバスを止める。バスに乗り込みながらオジサンを振り返り親指を立てた。そしてバスに乗り込み慌てて窓を開けオジサンに大手を降った。旅してるなぁ私!と一番感じる瞬間だ。