旧ユーゴスラビアを旅する完全版+マケドニア・スコピエ編

 ブルガリアからマケドニアの首都スコピエに到着、バスを降りれば早速タクシーの運転手が声をかけてきた。でもルーマニアブルガリアのタクシーの呼び込みとはちょっと感触が違う気がした。ルーマニアブルガリアでは何か木訥に

「タクシー?乗る?」

 的な感じで此方が断るとアッサリ無愛想に去っていく。だがマケドニアは何か緩い。この感触はアジアから中東にかけての感触に似ている。何だかニコヤカと言うか…。そんな時は私も口が滑る。

「タクシー?乗らないよ。どうしてって宗教だからさ。」

「はぁ?なんて宗教なんだ。」

「私の神は言うんだ。折角健康な足を二本も授けたのだから歩ける距離なら歩きなさい。ってね。」

「ふーん、まぁ頑張ってくれよ!」

 と。お手上げだって顔しながらも互いに笑顔。なんかスコピエが好きになってきた。

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 タクシーの運ちゃんに別れを告げて本日のホテルがある旧市街を目指せば、道にはロンドンの二階建てバスが走っている。

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 川には意味不明の巨大な帆船が!何が意味不明って、大き過ぎて橋を通れない。つまりずっと此処に停泊しているしかない。レストランだか博物館だか知らないが、余りにも大仕掛けなアトラクションだ。

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 そして街の至るところに建つ巨大な銅像。そして街の中心には、近隣諸国と大問題を引き起こしたアレキサンダー大王の巨大な銅像が。

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 放射状に延びた道路の先には共産圏が大好きな凱旋門、そして巨大な建築。

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 未完成なのか?それとも止まってしまった?やっぱり何処かチグハグを感じる街並み。新しく建てられただろうマケドニア正教の聖クリメント大聖堂は斬新なスタイルだけど何処か可愛らしい。

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 チグハグだけど何処かユーモラス。それが私のスコピエと言う街の第一印象。

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 しかしオスマン時代に築かれたと言う石橋の向こうで私のテンションは更にマックスとなる。そこに広がっていた旧市街は、サラエボでもあったオスマン時代の、即ちイスラームの旧市街だった。

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 バスターミナルで感じた感触の理由はこれだったのだ。こればっかりは理屈じゃない。私はイスラームの旧市街を訪れると至上に落ち着いてしまうのだ。

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 宿に到着すれば窓からミナレットが見えた。これで明日の朝は目覚ましは要らない。何故ならアッザーン(礼拝の合図)が起こしてくれるから。

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 私はひとしきり旧市街を彷徨い、雰囲気に浸ってから街を見下ろすべく城壁に登り、それを堪能してから、もうひとつ私の見逃せない場所へと向かった。

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 その場所はマザー・テレサ記念館。そうスコピエは彼女が18歳になるまで暮らした場所。私のアレキサンダー大王以上に尊敬する人物の所縁の地だ。

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(マザー・テレサ記念館とマザー・テレサ大聖堂)
 マザー・テレサはインド・コルカタのスラムで人として扱われないローカーストの人々を分け隔てなく救った。彼女はカソリックだったが、決してそれを押し付ける事無く、彼等が最期を迎える時、仏教徒には仏教徒イスラームにはイスラームの、ヒンズーにはヒンズーの作法に従い見送ったと言う。

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 時にそのカソリックの範疇を越えた彼女の流儀がカソリックの上層部を怒らせた事もあると言う。しかし私は彼女の取った行動は、その上層部の高僧達よりずっとイエスの教えに近いものだったと思っている。何故ならイエスは自分が十字架に架けられるその前日まで、救われない人々が暮らすケデロンの丘で彼等を救済し続けたのだから。

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 私にはひとつ疑問があった。彼女がどうして、そう行動出来る様になったのだろう?この地を訪れ少しだけ解った様な気がした。

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 此処マケドニアは、元々王国とかで無かった事もあり、様々な民族、宗教が同居する国だ。テレサカソリックの修道女だが、マケドニアでは正教、イスラームに次ぐ少数派、そして彼女はアルバニア人アルバニア人と言えば殆どがイスラーム。そう、彼女はこのマケドニアの中でも少数派に部類する人物だったのだ。そんな少数派として育った彼女にとって違った民族、異なる宗教と共存するのは当たり前な事だったのだ。

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 記念館自体は素朴で小さなものだったが、当初の念願も叶い私は満足して旧市街へと引き返した。そして再びあてもなく旧市街を歩き回る。

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 こんなのいつ売り切る事が出来るのか?と疑問に感じる程商品を山積みにして売っている光景を良くこんな国では見かけるが、そんな店の一見でペットボトルのコーラを探す。コカ・コーラではつまらないし高い。私が品定めしていると店員がおどけてまるでワインを説明する感じで

「Sir.!
此方は地元さんですが、味はとっても濃厚でお勧めですよ!」

 所詮パチモノって事だが、その演技がツボにはまって即決!イスラームの街はこれだから溜まらない。