シルクロードを西へ!イラン編イスファハーン3

 二つの宮殿を見終わった後、私は広場の北に位置するバザールの門を潜った。バザールは天葢に覆われ、明かり取りから仄かな日が差し独特の雰囲気を醸し出している。最初の内こそ土産屋が目立つが、次第に庶民の為の店が建ち並ぶ。

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 道は曲がりくねり幾重にも分岐する。そして途中イスファハーンで一番高いミナレットを持つアリー・モスクの脇を通り、終点にはイスファハーンでも重要なモスクの一つであるジャーメ・モスクに至る。

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(アリー・モスクのミナレット
 バザールは商店ばかりでは無く、旅の隊商が泊まったり商談をする為の隊商宿や彼等が疲れを癒すべくハンマーム(サウナ)等が揃い、それ自体で一つの街の機能を有している。

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 ジャーメ・モスクはサファビー朝が興る以前から建つモスクで、各王朝時代に増築が繰り返されたので、様々な時代の建築が今に残り、モスク建築史としても重要なモスクだ。

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 行きはヨイヨイ帰りは恐いのがバザールの迷宮巡りだが、此処ではそんな心配は要らない。心細そうな顔をしていれば、親切な現地の人々が道を指し示してくれる。向こうとしても簡単なのだ。何故なら誰しも向かう先はイマーム広場なのだから。

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 イマーム広場に戻りイマーム・モスクに入場した。このモスクの最大の特色はアイバーンと呼ばれる前門が二つ聳える事。一つは広場に正対し、もう一つの門はメッカに正対している。

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 モスクの一面は装飾タイルで覆われ、その緻密なアラベスクに心を奪われる。アイバーンの天井にはムカルナスと呼ばれる鍾乳石をイメージした装飾が施される。イスラームでは偶像を崇拝出来ないから、イスラームの芸術家はアラベスクに全ての美意識を凝縮した。イランの装飾美はその中でも際立ったものがあり、それがペルシャ絨毯の美しさに繋がっている。

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(ムカルナス)
 またイランのモスク建築で重要な要素にドームの形状の芸術性が挙げられる。ドーム建築は現在の東京ドームを想像して貰えば解りやすいが、極力柱を用いる事無く、広大なスペースを確保した上で屋根を設ける為に編み出された建築技術だ。

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(ドームの天井)
 ドームはその形状のシンボリックなところから宗教建築として多用されたが、イスラームは集団礼拝を行う為、取り分けドームのニーズが高かった為、ドーム建築が発展した。

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 ペルシャではドームの機能性の他にドームの上に更に球根状の膨らみを持つドームを被せ装飾を高めた。これがインドに伝わり更に膨らみが増し、タージ・マハール等に見られる玉葱状のドームとなる。その芸術性はイスラームの故郷アラブにも逆輸入され、現代ではモスクのシンボルとさえなっている。