シルクロードを西へ!西安編6

 しかしこの呂不偉の子、政、即ち後の秦の始皇帝は普通の子では無かった。それまで自分は王として自覚を持って成長し、やがて、自分が王であるにも関わらず、それを無視してやりたい放題の政治を行う呂不偉を忌み嫌った。

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 そして両者は何度も争い合って、そして遂に政は呂不偉を追い詰める。当然その流れの中で、政は自分の出生について知ってしまった事だろう。自分は王の血統と信じてこれまで、この国を我が物顔で私物と化している宰相呂不偉から取り戻すべく戦ってきた。しかしこの世で一番憎いと思っていた呂不偉こそが、実は自分の血が繋がった父だった。と言う事は、自分は秦の王家とは何の関わりも無い人物だった。どれほどの衝撃だっただろう?しかし、いや、血の繋がった親だからこそ余計許せなかったのかもしれない。彼が最後に呂不偉に送った言葉は

「血に甘えるでない。」 

だったと言う。

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 こうして宰相の呂不偉を討伐した政は、自分の目指す政治を行う。父を殺した政にとって、血統を重んじ、目上の人の忠誠が絶対の儒家思想はとても受け入れがたいものだったろう。そんな折り彼が出逢ったのが法家の発想だった。

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 こうして法家思想に乗っ取り、名や格式に囚われない実力主義で国造りをした秦は他の五か国を圧倒し、次々と他の五か国を撃破し統一を成し遂げる。そして先に述べた様に、様々なものを統一規格にしてものの物流等に目を見張る進歩を中国にもたらせたのである。

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 しかしながら、彼は呪われた血を拭いきれていなかった。彼は血統を重んじる儒家思想者を憎み続け、儒学者を捉えて大虐殺を行うのである。それ以後は永遠の命を求めたり、前半の輝かしい遍歴とは打って変わってしまうのである。こうして秦はあっという間に滅び、それ以後中国には儒家思想が戻ってしまい、封建王朝が生まれ、それが汚職にまみれると滅び、争乱が発生し、また新しい国が生まれると言うワンパターンな歴史を繰り返す事になる。

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 しかし、始皇帝が作った「ひとつの中国」の思想は、以降三国時代等時に分裂する事はあれど、やがて統一し直され、それは脈々と今でも引き継がれている。

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 こうして、世界で初となる立法国家は王の悲しい血の争いによって生まれ、その悲しき宿命によって短命に終わったのである。