ブータン旅行記11 タクツァン僧院前編
本日はブータン観光のハイライトとも言えるタクツァン僧院を訪れる。8世紀、ブータンに仏教を伝えたと言われるグル・リンポチェが飛ぶ虎の背に乗って舞い降り瞑想を行った場所と言われる。タク(虎)ツァン(隠れ家)でタクツァンとなる。
ガイドさんに伴われ意気揚々車を出た。ガイドさん曰く
「もう僧院見えてますよ!」
「何処?」
ガイドさん指差す先を見で追えば、遥か向こうに聳える垂直の様な断崖絶壁の上から四文の三程度の所にある小さな切れ込みに、小さな小さな米粒の様な、寺院の様な…。
「マジっすか!」
話には聞いていたが、実際に目の前にすると…。あんなところまでどうやって登っていくのさと思えてしまう。
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少し歩けばブータンでは珍しい土産物の露店が並ぶ、如何にも観光地的スペースが。杖をレンタルしていたり、途中まで登れる馬が待っていたりする。ちょっと気が傾く。ここ数日で私の負けん気が強いところを見抜いたガイドさんが囁く。
「ブータンでは馬とか乗るのは余り…。」
「いや、絶対自分の足で登る!」
暫くなだらかな道が続く、チラチラ上を見上げれば絶望的になるから道が林に入った時はチョッと心が軽くなった。更に進むと水力で自動に回るマニ車が旅の安全を願ってくれている。(多分)すると突然山道が牙を剥き出した。
痩せ我慢では無いが、山道としては思ってい程きつくない。しかし呼吸器に爆弾を抱える私にとって2500mの標高がネックになる。息が上がってバクバクして足が止まる。そんな事つゆも知らないガイドさんはさっきの調子でからかいに来る。
「山登った事あるって言ってたじゃないですか!日本のお爺ちゃんお婆ちゃんも元気に登ってましたよ!」
「日本のジイちゃんバアちゃんは時間もて余してて暇さえあれば山通ってるから我々働いてばかりの仕事人よりずっと健脚なんですよ!」
剥きになってヅカヅカ登っていく。漸く後ろの方でガイドさんが声をかけてくる。
「さっくんさーん、ちょっと休みながら行きましょう!」
「さては疲れたな?」
「さっくんの体調を考えただけですってば!はいお水!」
「サンキュッ!」
写真好きな私の手が空く様に彼は私の分の水を持っていてくれる。そして彼はいつも旅の行程がきちんとこなせるか考えてくれる。写真が好きでいつもフリーズしてしまう私。そんな私を真面目な彼はいつもハラハラしながら見守ってくれていたのだろう。写真を見返せば、広角のレンズに入ってしまった彼はいつも時計を睨んでいた。今回も13時迄に登らないと僧院は食事休憩で1時間閉まってしまうのでペース配分に気が気ではないのだろう。ありがとナ…。
そんな事をして約1時間私達は第一展望台に到着した。渡りに船とはこの事だ!とばかりに、甘いミルクティーとクッキーで体を癒す。目の前には絶景が!
…。確かに絶景には違わないのだけど、未だあんなにあるの?これ絶景ではなく絶望ってやつではないか?
不思議なものだ。先程後方の視界が晴れた場所で、振り返れば遥か下方にパロ谷の棚田を眺め
「私凄いじゃん!もうこんなに登ってきたんだ!」
と充実感と自信に満ち溢れた筈のに、前方の目指すべく目的地を見渡せば遥か彼方で、再び意気消沈する。山登りも人生もこれの繰り返しだ。
さぁガッツが沸いてきた!