ブータン旅行記10 民泊
本日の宿泊先は民家だ。ブータンの民家は世界の中でも立派な部類に入るのでは無いか?一軒一軒が非常に大きいのだ。その理由に人口が少ない事、自給自足の農業が中心の社会だった事が挙げられる。
一階には家畜や倉庫、二階以上に人が暮らし、窓の装飾に伝統的な装飾が入る。また屋根が束で持ち上げられているのが特徴、空いたスペースは穀物等の倉庫となる。また日本の常識から比べると圧倒的に仏間が立派だ。しかも家の一番良い部分、南東に置かれる事が多い。
ホームマザーに挨拶を済ませ、今は収穫が終わった田んぼで弓を習った。ブータンでは弓が国技で皆大好きなスポーツだ。ブータンでは左右に140M別れて互いの的を当て合う。当たると雄叫びと共にグループ全員で踊り、当てたものはカラフルな布を腰に巻く。
初めて挑戦する私は勿論そんなに離れず、これなら当たるだろ!的な所に手加減していただいたがそれでも当たらない。人差し指と親指の間を切ってしまう程頑張ったが、結局当てられなかった。
此処で着用させて頂いた日付は違うが、ブータンの民族衣装についても書いておきたい。男性はゴ(呉服のゴ)女性はキラと呼ばれる服を着用する。先に述べたが、民族のアイデンティティーを保つ為、ブータン人は公式の場では着用する様になっている。
ゴは一見すると短そうに見えるが、くるぶしまである着物を帯で膝までたくしあげている。膝上なら一般人、膝下は王族だ。テュゴと呼ばれる袖の長い襦袢を中に着用し袖を折り返しゴの袖を隠すのも特徴だ。正式な場、ゾンに入場する場合は男性はカムニ、女性はラチューと呼ばれるストールの様なものを肩にかける。
(女性の民族衣装キラ+ラチューの正装 写真は引用)
勿論湯が冷めたら頼めば追加で焼き石を投入してくれる。とたんジュパーと石が轟音を立てて、物凄い湯気と共に一瞬で湯温が上がる。一説によると焼いた石による遠赤外線効果もあると言う。ブータンの拙い電気式のホテルの風呂で暖まれない夜が続いたので、こいつは嬉しい。
しかも木の浴槽!懐かしい。最近は木の浴槽なんて有り得ないだろうが、昔は田舎のお爺ちゃん家に行くと木で作った樽型の浴槽があった。その感触が大好きでお爺ちゃん家が大好きになった。なんか最高に贅沢で、とても懐かしい時間だった。(ドツォは石を焼くのに時間も手間もかかるので、ブータン人にとっても、日常的な入浴では無く、我々が温泉に入る的な風呂なのだそう。)
(世界広しと言えど、ドップリ暖かい湯に浸かる事を楽しむ文化は驚く程少なく、旅で風呂に満足したのはハンガリーの温泉以来かな?う~ん極楽)
暖まったら夕食を頂く。ブータンの食事はテーブルは無く直に床に置いて食べるスタイル。大皿に持った料理を各自が自分の食べる分だけ自分の皿に盛り分ける。地元の人は手で食べる。
主食のご飯はほんのりとした色合いの赤飯。特別食の干し肉を使った炒めもの、ジャガイモ、そして大好きになった唐辛子とチーズの和え物エマダツィ。
就寝する場所は日本と同じく床に布団。やはり日本人にはこれが一番!うとうとしながら考えた。
「ブータン人は本当に幸せを感じているのか?」
これは満更嘘では無いと感じている。ブータンはつい最近まで貨幣経済の行き渡らない環境だった。生活は農業中心の物々交換。物々交換は互いの足りない物を補い合うものだから、格差が生まれ難い。格差がなければ、他人を羨んだり比べたりが無い。人口密度が極端に低くストレスが無い。
教育や医療は無料でホームレスになる人がいない。政府の政策で海外の資本主義や文化の流入も穏やか、更には国民自体が敬虔な仏教徒で欲が少ない。即ち幸福度と言うより不満が無い。こうした事から後進国では奇跡的に思える程満足度が高く、格差も少なく治安も良い国となっているのだろう。
かと言ってブータンに日本人が行ったからと言って、幸せになれる筈が無い。ブータン式に幸せになるには、我々は快適、便利な社会に親しみ過ぎている。勿論ブータン式幸福論を日本に持ち込む事も不可能だ。しかし、ブータンから学ぶべき事は本当に多いと思う。
1.公正で公平な社会経済の発達
2.文化的、精神的な遺産の保存、促進
3.環境保護
4.しっかりとした統治
この国民総幸福量の概念を個人に当て嵌めてみた。
1.仕事、収入優先では無く自分らしさを大切にする。
2.自分や家族の環境をより良いものにする。
3.自分自身をキチンとコントロールする。