ブータン旅行記3 ティンプーその2

 次にサブジ・バザールに立ち寄った。ブータンは敬虔な仏教国だから殺傷が出来ないので基本肉は食べない。基本と言うのは『あくまで自分が殺傷出来ない』だけなので輸入の肉なら食べられる。とは言っても陸路で輸入するとインドからとても時間がかかってしまうお国柄、肉も魚も乾物のみ。特別な時に食べるものであって、通常は完璧なベジタリアンだ。従ってバザールは野菜市場と言う事だ。

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 しかし見渡す限り赤一色、それは唐辛子。ブータンでは唐辛子は香辛料では無く野菜なのだ。だからブータン料理は世界一辛いと言われている。

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 観光客がブータン料理を頼んでも手加減してくれるので心配は無かったが、実際はそんな事では済まないだろう。ただ伝統料理の付け合わせエマダツィはチーズの柔らかさと唐辛子の刺激が、何故か癖になる一品だった。

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 続いてメモリアル・チョルテン。チョルテンとはミャンマー等で言うストゥーパ。即ち仏塔だ。これは早世したブータン三代目国王を偲んで建てられた仏塔で多くの参拝客が訪れている。

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 参拝の仕方はコルラと呼び、必ず右回りに回る。これは寺院だけでは無く、日常の些細な事にも応用される。そして礼拝は五体投地と言い、頭上、額前、顔前、胸元で手を合わせ、最終的には全身を地に伏せて祈りを捧げる。

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 その他重要な礼拝器具にマニ車がある。経文が書かれた筒上の回転体で、右回りに回すとお経を読む事と同義になる。大きさはピンからキリまで、水力、風力で回るものまである。またハンディタイプのものもる。

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 更にクゥンセル・ポダンと呼ばれる大仏に訪れた。大仏自身は近年外国のリッチな仏教徒が寄進したもので歴史的価値は無い。ただティンプーの街並みの見晴らしが良く、ティンプーっ子のデート場所だと言う。眺めればティンプーが山に囲まれた立地だと言う事が良く解る。

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 最後に向かったのは旅前から私がオプションで訪れるようリクエストを出していたチャンガンカ・ラカンラカンは日本で言う寺だ。ティンプーきっての名刹で子供の成長に御利益があると言うので子連れの参拝客が多い。

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 ただ私は子供がいないので、別に子供の為に参拝に来た訳では無い。旅前にブータン関連の書籍を検索している過程で、私はブータンの女性小説家が執筆した『ダワの巡礼』と言う本に出逢った。

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    人の言葉を理解出来るダワと呼ばれる野良犬の一生を描いた物語。そのダワが最期を送るのに選んだ場所、そこがチャンガンカ・ラカンだった。私の小さな聖地巡礼だった。

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(チャンガンカ・ラカンからの眺め)

 そして夜を迎えればあちこちから犬の遠吠えや唸り合いが聞こえてくるではないか!物語通りブータンには野良犬が溢れていた。

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 ブータンはインドと違って動物を神格化して捕まえないのでは無い。寧ろ困っている人の方が多く感じた。しかし先に述べた様にブータン人は殺傷を嫌う。一度は国が犬を捕まえ収容した事もあると言う。だが、それではやっぱり犬が可愛そうだと言う声が多く、結局元に戻してしまったのだと聞いた。

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 自分達が困っていたとしても、動物達の自由を奪ってまで欲望を遂げようとしない。それは仏教の教えからなのか?ブータン人の気質なのか?この旅でも同じ様なケースを幾度も私は経験する事になる。

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 街を歩けば野良犬の大群、犬好きの私も最初は躊躇したものの、ブータン人は犬に危害を加えないので、犬も人に危害を加えない。犬同士が縄張り争いしてるすぐ脇を歩いても全く平気だった。いつしかそんな犬の群れの中にダワはいないか探してしまう私が其処にいた。

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(クゥンセル・ポダン)
 日本人は他愛ない理由で犬を捨て、毎年16万頭もの犬猫を処分している。とても恥ずかしくなった。