ブータン旅行記1 出発

 珍しく羽田を深夜発のタイ航空でバンコクまで飛ぶ。やはり成田より格段に便利だ。出発は深夜だが、逆にそれが東京で仕事を終わらせた会社員に丁度良い出発なのか驚く程人で賑わっていた。それに反し羽田国際線開幕時にはあれだけ騒がれたショッピングスペースは殆ど最早店仕舞い。なんだかなぁと思いながら搭乗する。

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 タイ航空の深夜便の機内食をあてにして夕食を抜いたけど、深夜便は本当軽食のみで最早電気を落としておやすみモード。仕方なくシンゴジラを楽しんで就寝。

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 バンコクで4時間の乗り継ぎ時間を経てブータンへ飛ぶ航空機ドゥルックエアに乗り込んだ。機内モニターも無い簡素なシートだが、これもブータンの国情を考えれば仕方が無い事だ。二年前に訪れたミャンマーの上空を跨いでインドのバグドグラを経由し、そこでブータンに向かう人々を乗せ再び飛び立つ。その際乗降機を人力で移動している光景にインドの地方航空らしく微笑まされてしまった。そしてもうひとつ、ドゥルック・エアのランディングの上手さに舌を巻いた。

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(頑張れぇ!)

 バグドグラを飛び立つと、地上の光景は一気に山だらけとなる。ブータン上空に入ったのだ。窓からは遥か向こうにヒマラヤ山脈がお出迎え。その美しさに暫しカメラを離せなくなる。

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 ちょっと体制を戻してカメラの写りをチェックしていると、その隙を縫って隣に座っていた乗客がSorryと声かけて窓際にスマホを向ける。みんなこの瞬間を楽しみにしているのだ。

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 そんな事をしているうちに飛行機はグングン高度を下げていく。周囲は山、山、山、それでも飛行機は山を旋回しながら更に高度を下げていく。

「まさか不時着?」

 なんて思わせる程飛行機は低空で山を急旋回して降下していく。回り終わるとすぐ両側に山裾が迫る狭い盆地に一本の小さな小さな滑走路が見えてきた。いつもは何気無く済ませてしまう入国へのアプローチだが、ヒマラヤの絶景と言い、アクロバチックな着陸と言い、ブータンの旅は着陸迄も見所と言える。(要左窓側席)

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 両側には山が迫り、滑走路もとても短い、とてもジャンボじゃ着陸出来ない。管制施設を全く持たないから有視界でしか降りられない。つまり夜間や天候不順時には着陸不能な、世界で最も着陸が難しいパイロット泣かせの国際空港。雨期等荒天が続いた時は、数日ブータンに入国出来ない時もあると聞く、旅人泣かせの国際空港。

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 以前他国の航空会社が乗り入れを検討した事もあった様だが、この空港に着陸出来るパイロットを育成するコストとリスクを鑑みて撤退してしまったと言う。どうりでドゥルック・エアのパイロットの腕が良い訳だ。日々こんな悪条件の空港から離発着を繰り返しているのだから。

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 もしかすると、国が観光客を制限する以前に、この空港が物理的に観光客を制限しているとも言えるかもしれない。