2007ジョグジャカルタ旅行記4

 プランバナン寺院群、最後に訪れたのはプランバナンの中心とも言えるロロ・ジョグラン寺院。此方は純粋なヒンズー寺院だ。仏教を信仰するシャイレンドラ王朝はボロブドゥール建造後衰退してしまった。目の上のタンコブが無くなったマタラム王朝は時が来た!とばかりに作ったのであろうか?東南アジアでは最大規模のアンコール・ワットと肩を並べるヒンズー寺院である。

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 三つ並ぶ尖塔はブラフマー、ビシュヌ、シバとヒンズーの御三家の神々の為に建てられたもの。そしてその前方に建つ棟はそれぞれの神様の乗り物が奉られている。(ブラフマーは白馬ハンサ、ビシュヌはガルーダ、シバは牡牛ナンディー)

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 ブラフマーは創造を、ビシュヌは維持を、シバは破壊を意味し、それは宇宙全体の理(ことわり)を表していると言う。即ちこの三つの建築で宇宙の全てを表しているのだ。

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 残念な事に06年の地震の被害により私が訪れた頃には内部の拝観が出来なかったが、内部に納められているドゥルガ神の像には悲しい物語が語り継がれている。

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 その昔、美しい姫ロロ・ジョグランがいたが、魔法使いの王国に攻め滅ぼされ、彼女は魔法使いの后になる事を求められた。困ったロロ・ジョグランは一夜に千の寺院を築けたのなら妻になると魔法使いに答えた。

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 しかし魔法使いは精霊達を使い難なく寺院を築いてしまう。あとひとつ建てれば千になると言う時、困った彼女は侍女に米を臼でつく様に命じる。ジャワでは朝に米をつくので、その音で朝が来たと勘違いした鶏が一斉に鳴き出した。

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(セウ寺院)
 太陽の光に弱い精霊達は鶏の声に朝が来たと勘違いし一目散に散ってしまう。彼女の企みに気づいた魔法使いはそれを知って怒り狂い、彼女を石像に変えてしまった。

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(セウ寺院のクベラ像)
 その石像が、この遺跡に安置されているドゥルガ像であり、魔法使いがたった一晩で築き上げた寺院が千と言う意味を持つセウ寺院なのだと言う。

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(ボコの丘に残る遺跡)
 寺院散策後、ボコの丘に向かって大平原を眺めた。緑豊かなジャワの平原の中央にロロ・ジョグランが見える。嘗て栄華を誇った仏教もヒンズー教も、最早この地から去った。嘗てこの地で繰り広げられただろう物語をこの広大な光景を前に暫し振り返り、邪推かも知れぬが私なりにロロ・ジョグランの物語の起因に想いを馳せてみた。

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 ロロ・ジョグランは望まぬ求婚を迫られたと言う件は、仏教王国であるシャイレンドラ王朝から迫られた政略結婚を指しているのではなかろうか?そして魔法使いが一夜にして作ったと言う仏教寺院、セウ寺院は、国家安泰の為シャイレンドラ王朝に寺院を寄贈せねばならなかったマタラム王朝の境遇が物語に反映されたのではあるまいか?

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 さて、それではそのシャイレンドラ王朝が築いたボロブドゥールを目指そう!