明日のために!~丹下段平と言う男

 漫画あしたのジョー矢吹丈が主人公である事は間違い無い。だが、物語前半はジョーを育てたトレーナー、丹下段平もまた主人公の様に思う。

丹下段平は彼自身も昔はプロボクサーだったが、日本タイトル挑戦の試合直前に怪我をおい、プロボクサーとしての道を絶たれる。以降ジムの会長としてボクシングに携わるも、不祥事を繰り返しボクシング界を追放させられてしまった。

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それ以来段平は日雇い労働者と荒くれ者の街、山谷にて日銭で買った酒に溺れながら暮らしていた。そんな山谷の街に不良少年矢吹が流れて来た。

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夢破れ生き甲斐を無くしかけていた段平だったが、喧嘩に明け暮れるジョーのパンチを見て、ジョーのボクサーとしての資質を一瞬にして見抜く。

段平はヤクザに喧嘩を売って囲まれたジョーを転ばせ彼の上に覆い被さり、ヤクザに叫んだ。

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「こいつには指一本ふれさせねぇ!
殺るなら俺を殺れ!
ジョーは俺にとってあしたなんだ!
あしたのジョーなんだ!」

段平が身体中包帯だらけになって守ろうが、ジョーは段平に耳を貸さないどころか悪さを繰り返し少年院に送られてしまう。しかしその少年院でジョーは運命のライバルに出逢う。力石透だ。喧嘩なら負けないと調子に乗っていたジョーは力石にコテンパンにされてしまう。

そんなジョーに段平はボクシングを教え込まんと手紙を書き続ける。「あしたの為のその一」「あしたの為のその二」と。それを貪る様に読むジョー、こうしてライバル力石を通じジョーはボクシングの魅力に取り込まれていく。

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一方ジョーの出所に合わせ段平は大好きだった酒を断ち昼夜働き、泪橋の袂にバラックとは言えジムを建て、追放処分となっていたボクシング界に再び打って出る準備を整えていた。

そして出所したジョーを迎えて彼に言い聞かせた名台詞

「この橋はなぁ。人呼んで泪橋と言う。
いわく…人生に破れ、生活に疲れ果ててドヤ街に流れてきた人間達が涙で渡る哀しい橋だからよ。
三年ほど前のわしもそうだった。
おめえもその1人だったはずだ…
だが今度はわしとおまえでこの泪橋を逆に渡り、あしたの栄光目指して第一歩を踏み出したいと思う。
わかるか?わしの言うてる意味が…
ああ?わしのいうてる意味がわかるかよジョー!」

こうして成れの果ての場末の街、山谷を舞台に過去に傷を追った二人の男が二人三脚で明日を目指す物語が始まるのである。

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昨日迄がドン底だろうが何だろうが、振り向く事無くうつむく事無く、明日へ向かってひたすらに、ひたむきに頑張って行く。そん前向きスピリットを私に教えてくれた物語。

破れかぶれだったジョーに明日を見出だし、ジョーに明日を与えた段平もまた、この物語の主人公と言えよう。