ノンマルトの使者

 その日ダンとアンヌはとあるビーチにデートで訪れていた。アンヌが砂浜で日光浴を楽しんでいると、真市と名乗る不思議な少年が現れアンヌに訴えかけた。

「海底の開発をやめてよ!やめないと、大変なことになるよ!」

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海底の開発は人類にとってもウルトラ警備隊にとっても大切な事、アンヌは子供の話と捉え相手にしなかった。

しかしその直後海底開発センターが爆発、ウルトラ警備隊にも真市少年から警告の電話がかかってきた。

「海底はノンマルトのものなんだ」

真市少年の居場所を探すダンとアンヌ。その道中ダンは思案に暮れた。

「ノンマルト…僕の故郷M78星雲では、地球人のことをノンマルトと呼んでいる。ノンマルトは人間のことである。それはどういう意味だろうか。人間でないノンマルトがいると言うのか?」

地元の小学校では該当する少年は見つからなかったが、先程の海岸で彼等は真市少年を見つけた。問い質すアンヌ。

「ノンマルトってなんなの?」

「本当の地球人さ。ずっとずっと大昔、人間より前に地球に住んでいたんだ。でも、人間から海に追いやられてしまったのさ。人間は、今では自分たちが地球人だと思ってるけど、本当は侵略者なんだ」

「人間はずるい、いつだって自分勝手なんだ。ノンマルトを海底から追いやろうとするなんて……」

真市君の言葉を信じるなら、嘗て先住民族だったノンマルトは侵略して来た戦争が強い人類に海に追いやられ、ひっそりと暮らしていた。しかしその海でさえ人類の海底開発によって奪われてしまえば、最早ノンマルトに生きる術は無い。画してノンマルトは怪獣ガイロスと人類から奪った原子力潜水艦を使って反撃を試みたのだ。

真市少年が叫ぶ

「ノンマルトは悪くない!人間がいけないんだ!ノンマルトは人間より強くないんだ!攻撃をやめて!」

セブンに変身しようとするダンの目の前に真市少年は立ち塞がり変身するのを拒むが、ダンは断腸の想いで変身する。

「ウルトラ警備隊のバカ!!」

真市少年が泣き叫ぶ。

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こうしてセブンとウルトラ警備隊の活躍によりノンマルトと怪獣ガイロスは退治され更に探索を続けたウルトラ警備隊のハイドランジャーはノンマルトの海底都市を発見する。その時キリヤマ隊長は…

「もし宇宙人の侵略基地だとしたら、ほうっておくわけにはいかん…我々人間より先に地球人がいたなんて……そんなバカな……やっぱり攻撃だ」

そして無抵抗のノンマルトの海底都市はあっという間に破壊され、ノンマルトは完全に滅びた。キリヤマ隊長は叫ぶ。

「ウルトラ警備隊全員に告ぐ!ノンマルトの海底基地は完全に粉砕した。我々の勝利だ!海底も我々のものだ!」

此処に、不都合な真実があれば、たとえその対象を滅ぼしたとしても自分の正当性を手に入れようとする人類のエゴが強烈に描かれるのである。

ダンは浮かない顔で想いを巡らす。

「真市君の言った通り、もし人間が地球の侵略者だったとしたら、ウルトラ警備隊の一員として働く僕は、人間という侵略者の協力をしていることになる……だが、ノンマルトは本当に地球人だったのか?」

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勿論これは作り話ではあるが、人類の歴史は征服した側、征服される側で歴史が大きく見解が異なるのは常の事だ。新大陸と言う栄誉はヨーロッパの視点に過ぎず、それまで中南米に暮らしていたマヤやインカ文明の人々からすればそれは侵略と虐殺の歴史でしか無い。

アメリカのインディアンにしろ日本のアイヌにしろ、彼等の歴史は勝者によって塗り替えられ、失われ、そして記憶すら抹消されていく。本当に人は悲しい程自分の立場でしか物事を考えられない動物でもある。

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こうして事件は解決し警備隊の面々はオフで例の海岸を訪れた。その時

「ウルトラ警備隊のバカ!」

ダンとアンヌは真市君の幻を見つけ岩場に走ると其処に佇む婦人と石碑を見つけた。

「海の大好きな子でした。私も、海のように広い心をもった男の子に育ってほしいと思って、毎年ここに連れて来ていたんです…」

石碑には真市と書かれていた。

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果して真市君は霊となって、ノンマルトの使者として地上に現われていたのでしょうか?

それにしても、ノンマルトは本当に地球の原住民だったのでしょうか?すべてが消滅してしまった今、それは永遠の謎となってしまいました。