ダークゾーン

 今回からは舞台をウルトラセブンに移す。セブンは怪獣VSウルトラマンと言う構図だった前作と比べ異星人の侵略と言うテーマで描かれている点に特色がある。また、メカニックの分野も非常に力が注がれた。山が動きそこから出発するウルトラホーク1号、 滝から姿を表す3号、 そんなシーンにワクワクさせられた子供も多かったと思う。サンダーバードの秘密基地をモチーフにして演出された警備隊の秘密基地は、当時の高度成長期の科学技術の進歩に沸き立つ人々の心を揺さぶったが、その一方物語は科学技術に全てを依存する事への警鐘も忘れない。そんな第6話ダークゾーンを紹介しよう。

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ウルトラ警備隊のアンヌ隊員の部屋に宇宙人が忍び込んだ。アンヌに助けを求められダン隊員(セブン)がアンヌの部屋に急行した。しかし宇宙人は怪我をおっておりしかも友好的だったのでダンとアンヌはすぐ打ち解ける。

聞けば宇宙人は地球より遥かに科学技術が優れている星からやって来たと言う。水も空気も科学の力を使って作り出すと言う。そんな宇宙人は自嘲を込めてダン達に話す。

「科学が進むというのは不便なものだ。工場が停止してしまえば全てが止まってしまう。君達も気を付けた方がいい。大昔の生活に憧れる日も来るかもしれない。」

そんな折り不審な電波をキャッチしたウルトラ警備隊はその内容がペガッサ星から地球に発せられた警告文である事を突き止めた。

それはペガッサ星は科学の技術で作り上げられた自動運転する星団だったが、動力装置が故障してしまい、このままでは地球と衝突してしまうと言うものだった。

これを知ったダンは宇宙人にこの事実を突きつける。と彼は

「そんな事は簡単だ。地球が軌道を少しの間変更してくれればお互い何の問題も無い!」

慌てたのはダンだ。地球は星であり軌道を変える事は出来やしない。

しかしその事実を知った宇宙人も更に慌てた。

「なんだって?!君達はただ動いてるだけの星の上にいるだけなのか?!」

地球人にとっては地球は星だから軌道は変えられないのは常識でもあるが、科学技術を駆使した宇宙船で暮らすペガッサ星人にとっては軌道を変えられない事が常識はずれな事に写ったのである。

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一方ウルトラ警備隊は地球の運命を救うべくやむ無くペガッサ星団を破壊する事を決意する。直前まで破壊する代わりに次の宇宙船が出来るまで地球に移住させる事を約束し、その為移住を促すが、ペガッサ星人はそれを信用せず、遂に星団諸ともウルトラ警備隊によって爆破されてしまう。

方やアンヌと一緒にいた宇宙人は、アンヌにダンと一緒に宇宙に逃げる様説得する。彼はペガッサ星人で、ペガッサ星保護の為 、もしもの時地球を破壊する為の工作員だったのだ。最早地球を爆破するしかなくなった今、友情を分かち合ったダンとアンヌを助けたかったのだ。

しかしそのダンからもうペガッサ星は地球の攻撃により消滅した事実を知らされる。故郷も同胞も全て失った彼は復讐しようとするもセブンに変身したダンの攻撃に食い止められてしまった。セブンは彼にトドメを指す事は無かった。彼は今でもダークゾーンの何処かで寂しく暮らしているのかもしれない。

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この物語は科学技術だけに頼る事の警鐘が物語に色濃く描かれている。技術革新により現代の生活はとても便利になったが、逆を言えばいざそれが機能しなくなった時、我々は為す術を失う。3・11の時の東京のうろたえ様はまさにその恐ろしさを我々に知らしめたと言えよう。

またこの物語では地球人、ペガッサ人双方とも争う理由は無く、しかも友好的であったとも言える。

「貴方は宇宙人なんだね。」

と言うダンの問いかけに、ペガッサ星人は

「へりくだるなよ!地球人だって立派な宇宙人じゃないか!」

と応え、両者の気持ちは歩み寄る。

しかし互いが存亡の危機に直面した時、双方の科学技術には隔たりがあり、その常識が異なった事から両者は理解し合えず、悲劇を生んでしまった。

価値観、常識の異なる二者が、お互いを理解し、共存する事はできないのか?それはウルトラセブンの一番大きなテーマであると共に現在の人類の大きなテーマでもある。

現在でも地球上では、それぞれの価値観を否定し合い、違いを反発の火種にさえして紛争を続けている状態だ。

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ウルトラセブンの別の物語でメトロン星人のエピソードがある。メトロン星人は特殊な薬物を煙草に仕込み、地球を侵略しようと試みた。

「我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きていることに目を付けたのだ。地球を壊滅させるのに、暴力を振るう必要はない。人間同士の信頼感を無くすればいい。人間達は互いに敵視し、傷つけあい、やがて自滅していく。」

しかしメトロン星人の企みはセブンによって阻まれ、事件は一件落着した。しかし最後のナレーションが心にグサッと来るものがある。

メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。でもご安心下さい、このお話は遠い遠い未来の物語なのです…。

え、何故ですって?…
我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから…」