ムガル帝国栄枯盛衰3

 国が安定すると次に文化が成長する。アクバルの跡を継いだ4代目ジャハーン・ギールは絵画等芸術を好んだと言われる。続く5代目シャー・ジャハーンは建築を好み、デリー、アグラー、ラホール、即ちムガル帝国の重要拠点である三都市にそれぞれ華麗な建築や築城を残した。

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 そんな中でも一際美しいのがタージ・マハールだ。彼は重婚が普通のイスラームで珍しくたった一人の女性を愛した。そしてその愛妻への墓標がタージ・マハールだ。彼は愛妻の墓標を築く為に国費が傾く程の熱の入れようだった。更には川の対岸に黒いタージ・マハールを築きそこを自らの墓標とする筈だった。

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 しかし息子のアウラングゼーブにそれを阻まれ、更にアグラー城に幽閉されてしまう。アウラングゼーブからしてみれば父の行為は、自分の妻の(彼にとっては母)為だけに国を傾けさせる父の行為は許容出来ないものだったのであろう。

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 こうしてシャー・ジャハーンは失意の中、自らが築いたタージ・マハールを牢の中で眺めながら一生を終える事となった。彼の死後彼の廟は築かれる事無く、彼はタージ・マハールに眠る彼の愛妻、ムムターズ・マハルの脇に安置されている。しかし彼にとってそれが幸せだったのでは無いだろうか?何故なら愛妻のすぐ隣で永遠の時を過ごせるのだから。

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 因みに全てが相対的に築かれたこの建物の中で唯一相対性を崩してしまっているものがある。それが彼の棺だ。部屋の中央に置かれた后の棺の真横に王の棺が付け足される結果となったからだ。