In the biggining

 チャイナエアラインで順調に台北で乗り継ぎを済ませ、経由地バンコクに到着した。値段が安い為かバンコク直行便は豊富にある筈なのに沢山の日本人がこの乗り継ぎ便を利用しているのには驚いた。

 しかしもっと不思議に思う事がある。あれ程いた筈の日本人がバンコク市内へ向かう鉄道に殆ど乗って来ない事だ。ツアー客はお迎えのバスで向かうだろうが、後は殆どの人がタクシーを利用するのだろうか?時折薄汚いバックを背負った同じ臭いを感じる輩を見る程度だ。

 終点のパヤータイ駅を降りると徒歩で目指すカオサン通りへ向かった。そこまでは2キロ程ありちょっと時間はかかるが久し振りのバンコクの風を感じたかった。駅から東に向かえば、最早東京に遜色を取らない最先端なバンコクの町並みが拡がるが、そんな風景には何の興味も示さない。

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 屋台が拡がる脇道を闇雲に歩いていく。時に方角を見失うがそれも楽しみの一つ。適当に歩いていれば時期に記憶に残る街角に出くわす。バンコクには何度も訪れているから土地勘はある。

 そんな事でお迎えのバスでバンコクに到着しただろう人々がとっくにホテルで夕食を済ませただろう頃合いにカオサン通りに到着した。カオサン通りとはバンコク、いや世界的に有名な安宿街で、世界中のバックパッカーが集結するバックパッカーの聖地だ。いやだったと言うのが正解だ。

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 通りに繰り出して驚いた。白人だらけである。店も洋楽をガンガン鳴らし大賑わい。そこにたむろする白人達は皆在りし日の彼等とは違った匂いの人種だった。

 以前未だ此処がバックパッカーの聖地だった頃、此処には薄汚い目だけ凛と輝かせた夢追う旅人と、麻薬にいかれた所謂沈没してしまった旅人達で溢れていた。どちらにしても世俗とは良い意味でも悪い意味でもドロップアウトしてしまった人々達だ。

 しかし今此処に集まる旅人は健全過ぎる匂いが溢れている。所謂一般観光客だ。そう言えば深夜特急を書いた沢木氏を旅の魅惑に引きずり込んだ香港の廟街も、当時のディープ感は全く失われ、今では健全な観光地と姿を変えた。此処カオサン通りも時代の波には抗えない。

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 私はちょっと寂寥感に囚われながらカオサン通りを後にしてライトアップが美しい王宮を抜けチャオプラヤ川沿いを散策した。以前からそうだったろうか?クリスマスシーズンだからか、三島由紀夫氏の小説にも登場する暁の寺院ワットアルンがド派手なライトアップされていた。